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3Mix-MP法とは、3種類の抗生物質・抗菌剤を混ぜたものを
虫歯の部分に詰めることによって、
虫歯菌を殺して虫歯を治すという治療法です。
従来の治療法との最大の違いは、
細菌感染した歯を全て削らずに一部残すということです。
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- 歯を削る量が少なくてすむ。
- 歯の神経を取らずに、残せる可能性がある。
- 副作用は現時点で報告されていない。
- 歯を削る量が少ないので、痛みが出る可能性が低くなる。
(雑誌などで「痛くない虫歯の治療法」と
紹介されていることもありますが、
痛みが全く無い訳ではありません)
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- 行っている歯科医院が少ない。
(2012年時点で正規の3Mix-MP法が受けられる医院は40件以下)
- 信頼に足る実績・データが不十分。
- 安全性の面で不安が残る。(耐性菌の出現など)
- 治療費が高くなることがある。
(詳しくは本ページ下部
3Mix−MP法の治療費・費用をお読みください)
- マスコミも本療法についてよく理解しておらず、
誤った報道がされるケースが多い。
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- Metronidazol
(メトロニダゾール、市販薬剤名フラジール)
- Minocycline
(ミノサイクリン、市販薬剤名ミノマイシン)
- Cyprofloxacin
(シプロフロキサシン、市販薬剤名シプロキサン錠)
- MP
(マクロゴール、プロピレングリコール)
メトロニダゾールは
深部う蝕象牙質中に多く存在する偏性嫌気性菌に、
ミノサイクリンとシプロフロキサシンは
通性嫌気性菌や好気性菌に対して有効と言われています。
MP (マクロゴール、プロピレングリコール) は
上記の抗生物質・抗菌剤を
患部の隅々まで効率よく行き渡らせるためのものです。
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3Mix−MP法は保険外の治療法です。
治療費は歯科医院によってまちまちで、
保険で虫歯を治療するのと
ほとんど変わらない料金で行っている歯科医院もあれば、
1本2〜10万円ほどするところもあります。
また、3Mix−MP法を行うと
その他の治療全て(詰め物やクラウン等)に、
保険が使えなくなることがあります。
3Mix−MP法の治療費については
まだ曖昧な部分がありますので、
事前に電話などで歯科医院側にご確認ください。
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3Mix-MP法に対する、日本歯科保存学会の公式見解 |
実は私自身、
学生時代に3Mix-MP法による虫歯治療を受けており、
その後トラブルが無かったため、
3Mix-MP法について否定的な考えは持っていませんでした。
しかし、その後いろいろと勉強をして、
広い視野で見ることができるようになってくるうちに、
3Mix-MP法に対して否定的に考えるようになってきました。
その理由は次の通りです。
1.虫歯が治ったのが、3Mix-MP法のおかげだとは限らない
私自身まだ学生で知識も乏しかったため、
3Mix-MP法を行って虫歯が治ったことにより
「3Mix-MP法のおかげ!」と思ってしまいましたが、
今は虫歯が治ったことと
3Mix-MP法を使ったこととは
切り離して考える必要があると思っています。
例えば、3Mix-MP法を使った場合の成功率が75%、
使わなかった場合の成功率が90%で、
自分のケースでは
たまたま成功しただけなのかもしれないからです。
(上記の成功率に根拠はありません。
3Mix-MP法には信頼できる成功率のデータ自体ありません)
2.マスコミの誤った報道
私も父もマスコミにはお世話になっているので
あまり言いたくはないのですが・・・
3Mix-MP法にはいくつかの信頼できるデータと、
ほとんど信頼できないデータがあるわけですが、
マスコミではほとんど信頼できないデータだけを取り上げて、
「痛くない虫歯治療」
「削らない夢の新療法」
などという報道がよく行われていること。
また、その報道をする人達が
本当に歯科のことをよく分からずに報道しているということ。
それを信じてしまう患者さんが多いことなどから、
「せめて当サイトくらいでは正しい情報を発信しよう」
・・・ということで、どちらかというと否定派になってしまいました。
マスコミは大きな影響力がある以上、
発信する情報はできる限り吟味して、
責任を持って発信して頂きたいと切に願います。
3.3Mix-MP法の公式ホームページ
「★このサイトはリンクフリーではありません」
と書かれているのでリンクはしませんが、
3Mix-MP法公式ホームページの
「患者さん向けコンテンツ」⇒「科学的根拠」のページに、
「この治療法は、細菌学的な基礎実験、治療術式の裏付け実験、
臨床成績が国内外の学会で発表され、論文や本になっています。
その一部を下記に列記します。
これでLSTR 3Mix-MP療法が科学的根拠に基づいた
治療法だと理解していただけると思います。」
というような一文が書かれていますが、
「国内外の学会で発表され、論文や本になっている」ことと、
「科学的根拠に基づいた治療法」は、全く別の話です。
3Mix-MP法には2012年現在でも、
従来型の治療法と比べて成功率が高いという根拠はなく、
しかも安全性についてもよくわかっていませんので、
明らかに「科学的根拠に基づいていない治療法」です。
発案者の方は当然このようなことを理解されているはずですが、
公式ホームページ内に上記のような
誤解を招く文章が記載がされていることが、
私を3Mix-MP法否定派に傾けた大きな理由でもあります。
4.説明と実際に行われている治療とのギャップ
3Mix-MP法の公式ホームページには、
「従来の治療法でも十分治せる症例に
むやみに使用してはならない」
と書かれていますが、そもそも、
「従来の治療法で十分に治せない症例とはなんなのか?」
がはっきりと分かっていません。
「使用薬剤にアレルギーが無いことを
確認できなかったら使用しない」
とも書かれていますが、
実際にどのくらいの医院が確認をしているのか
非常に疑問です。
というわけで、私個人は今は3Mix-MP法反対派なのですが、
それはあくまでも上記のような理由からであり、
自分の患者さんに対して3Mix-MP法を行い、
失敗が続いたからというわけではありません。
臨床的には3Mix-MP法を使って
好成績を収めているという先生もいらっしゃいますので、
完全に否定はしませんが、
その先生が果たして
従来型の治療をきちんとされていたのか?
本当に成功率を把握しているのか?
・・・が分かりませんし、
3Mix-MP法の優位性を示す
信頼できるデータもありませんので、
現段階として推奨できないということです。
今後、質の高い研究により、
3Mix−MP法の成功率・安全性・優位性などが証明されれば
皆さんにお勧めさせて頂くようになると思いますが、
現段階ではお勧めできる根拠が無いのでお勧めしません。
もしかすると宣伝目的で、
3Mix-MP法を行っているだけの歯科医院もあるかもしれません。
歯科医師でもこういった情報を知らずに
3Mix-MP法を行っている先生もいらっしゃいますので、
本療法を臨床に活用されるのであれば、
患者さん・歯科医師ともに
出来る限り正確な情報を得た上で行って頂きたいと思っています。
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3Mix−MP法の成功率・安全性・優位性については
まだわかっていません。
そのため3Mix−MP法の適応に際しては、
事前に担当の医師に十分な説明を受け、
使用薬剤に対するアレルギーが無いことを確認し、
治療に同意してから適応される必要があります。
しかし現実には、このような手順や正しい情報を知らずに、
ただマスコミの良い部分のみを強調した報道などに流されて
藁にもすがるといった感じで治療を受けられている人が
多いのではないかと思います。
もし藁にすがるのであれば、十分な研究が行われ、
成功率・安全性・優位性の証明されている
正しい根管治療を行っている歯科医院を探して
受診されたほうが良いのではないかと思います。
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